紅茶色の媚薬を飲まされて
まるで荒波のようだ、とネルは思う。
カバリという一見静かな男の中の、いったいどこにこんな熱情が潜んでいたのか。
どんな女に対しても、カバリは、こうなるのだろうか。
「ネル、辛くはないか……っ」
口ではそう言っているのに、カバリの瞳の中には、ぎらぎらと男の欲望が絶え間なく渦巻いているのが見て取れた。
媚薬がなかったら、ネルは恐ろしさに慄いていたかもしれない。
それほどまでに、彼は激しかった。
身体の全てに彼の指先、唇が触れていく。触れた部分がもどかしくて、焼け付くようだ。
強弱をつけたそれに翻弄されて、あられもない嬌声をあげた。
ふぁ、と苦しさに大きく息を吸い込む。
熱い、熱い。
彼の肌から伝わる灼熱のような温度が、それでもネルは嬉しかった。
「カバリさま、わたし……」
涙が一筋流れた。
何が悲しいわけでもない。痛いわけでもない。
けれど感極まって流れ出た涙は、今まで守って来た純潔をカバリに捧げられたことへの喜びに違いなかった。
「好きなんです、貴方が。カバリさまが好き……」
ため息を吐くように、そっとネルが呟くと、カバリは熱に浮かされたような瞳でネルを見つめーー耐えかねたようにその小さな体躯を掻き抱いた。
「……ずっと、そう言ってくれたらどれだけ幸せかと、思っていたが……予想以上に嬉しいものだな」
まるであの日、この時間が唯一の息抜きだと微笑んでくれたあの瞬間のように。
カバリが優しく微笑んだ。