紅茶色の媚薬を飲まされて

***

「……で?首尾はどうだった」

にやり、と口の端を上げ、王はカバリを興味深そうに見遣った。

「まあ、お前が昨日の午後執務室に来なかったことから大体は察しが付くが……。真面目だけが取り柄だと思ってたが、とんだ勘違いだったようだな、カバリ」

「どの口が言いなさる……」

カバリは『そうなるよう』仕向けた張本人をじろっと睨み、けれどこの男の悪戯が無ければ上手くいっていなかったことも知っているので、なんとも微妙な気持ちになる。

そんなカバリを心底楽しそうに見つめ、耐えかねたように王は笑い出した。

「くくっ、お前が三年もの長い間グダグダとネルに入れ込んでるのを見てるのも中々楽しかったが……!
流石にネルへのお前の執着っぷりに兵たちから不満が出てたからな、これでひと段落すればいいが……どうだ?」

試すような視線に、カバリはうっと声を詰まらせる。王が何を言わんとしているか分かって、しぶしぶ「善処する」とだけ答える。

兵たちの不満、というのは、職業柄怪我の多いカバリの部下である近衛隊の兵士たちが薬草を紅茶殿に取りにいくたびに、上司であるカバリから嫉妬深い視線を背後に受けることに対してのものだった。

もちろんカバリ自身わざとやっているのだから、特に悪びれる様子もない。
ただ、上司の想い人に手を出すとどうなるのか、ということをこの三年間を通して部下たちにはよくよく“教育”してきたという自負はある。

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