紅茶色の媚薬を飲まされて

「ただ、あまりにも目に余る者はすでに退職に追い込んでいますので、ご心配には及ばないかと」

「おいおい、しれっと俺様の近衛兵減らしてんじゃねえよ」

呆れたようにため息をついて、王はカバリの満足気な顔を見つめる。
この男に女の影を見たことは一度もない。
花街に行っても何もせず王の警備に回るような堅物なのは有名な話だ。

それが、ネルに入れ込んでからは目も当てられないほどの色ボケっぷりだ。
それでも仕事は抜かりなくこなしていたので何も言わなかったのだがーー。

先日、妻のナキから何故か王が怒られる羽目になる。

「ナキに言われて初めて気付いたよ、ネルがもう24歳だったなんてな。さっさと蹴り付けろって俺が怒られたんだぞ、てめーがグダグダしてるのを」

可愛い妻の頼みとあれば勅命だって安売りしたくなるというもの。
無理やりくっつけた形になったが後悔はしていない。

「……俺もそろそろ口説くつもりではあったんですが」

「そう言って何回も失敗してんの俺が知らないわけ無いだろ」

街にデートに誘ったつもりが食堂で一緒に昼飯を食べてたり、舞踏会に誘ったつもりが一緒に警備の任務に就いてたりなんてアホみたいな本当の話はまことしやかに王城の噂として流れている。

皆、ネルとカバリの両片思いを生暖かい目で見守っていたのだが、これでようやっと安心することができるというもの。

「まあでも、付き合うことになって良かったじゃないか。結婚するとなったら教えてくれ」

そう王が微笑むと、カバリはキョトンとした顔をしたあとーーみるみるうちに顔が青くなっていく。


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