紅茶色の媚薬を飲まされて
「……俺から言うのは憚られるが。
せめて、俺の意見ではないとだけ、言っておく。あくまで王の意見だからな」
「何ですか?」
あまりに勿体ぶるので、ネルは不審げに目を細めた。カバリはその視線から逃げるようにして口を開いた。
「……二十歳をとうに超えて男性経験が無いのは見苦しい、それを飲んで男をひっかけろ。そんで早く子供産んで俺様の家臣を増やせ」
「………」
「……これでも王は、君の才能を買っているから、その血を継いで欲しいのだと思う」
「ナイスフォローありがとうございます…」
はは、と乾き切った笑いと、全く笑っていない目で、ネルは紅茶殿から東に位置する玉座に向かって人に見せてはいけないジェスチャーをした。
本来ならばそんなことをした時点で首を撥ねられてもおかしくはないが、今回ばかりは側近であるカバリですら、あえて見て見ぬ振りをした。
「分かりました、飲みましょう。
そんなことをしたって無駄だってこと、王に分かって貰わねば」
そう言ってネルは綺麗に輝く紅茶を覗き込む。
少しだけ、手が震える。
紅茶殿の茶葉には、事前にその効果、効能を十分に発揮出来るよう魔術師によって薬効を倍増させる術が施されている。
ただの茶葉ならばいざ知らず、強力なものであることは確かだった。
「……私が飲んだのを見届けなければならないでしょうから、カバリ様は私がこれを飲んだらすぐに退出して下さいね。さすがに人に言えないような姿になってるのを貴方に見られたくはないです」
そう言ってネルは力なく笑った。