紅茶色の媚薬を飲まされて
「胸、濡れててきもちわるい…」
ぷちぷちとボタンを外そうとするも、上手く行かずに泣きそうになる。
熱い。熱い。
今は夏じゃないのに、まるで身体の中から燃えているみたい。
「脱げないの、いや……」
「待て、服が破れる」
どこからか聞こえた声に、ネルは視線を上げる。
いつのまにか部屋だった。
ベッドの上で、ネルはもがいていた。
目の前には真っ黒な短髪に、いつもはあまり表情の変わらない彼。けれど今は何だかいつもの彼と違うような気がした。思考がまとまらない頭では何が違うのかよく分からなかったけれど。
首から胸元にかけて、ボタンを外してくれる彼をネルはどこか夢のような気持ちで見つめる。
きりりとした眉は、少しきつい印象。
一重の瞳も少しだけ怖い。
でも、どこか優しくて、安心する眼差し。
「ネル……これでいいか?」
「ぜんぶ、外して」
夢なら、いいか。
こんなにも熱いのだから。
どこか狼狽えたように、少しだけ躊躇した指が、またボタンに掛かる。
大きい手だった。ネルより、きっとふた回りは大きい手。ゴツゴツしていて、剣を持つタコがそこかしこにあって、ザラザラしそう。
触ってみたい。
ずっと、触ってみたかった。
あの日、あの笑顔を見たあの瞬間から、ネルはカバリに触れてみたかった。