【短】いわゆる1つの愛というもの

和登に、好きな人がいることは…前々から気づいてた。
それが自分と仲のいい一つ上の先輩だということも。


その為に、あの日わざわざ誰もいない教室に呼び出されたこと。


言わないで。

その口唇から残酷な言葉は聞きたくない。

でも、その願いは叶わなかった。


「良かったら先輩とのこと…応援して欲しい。てか郁乃が応援してくれないと…困る」


目の前に何年も想い続けてきた存在がいるというのに、そんなことも気付かずに、照れた様子で私にピンク色の台詞を投げ付けた彼。


私は泣かないように、下を向いた。
真っ直ぐに彼を見たら…泣いて困らせてしまいそうだったから。


好きなんだ。
好きなんだ。
好きなんだ。


想いは膨らむ。
破滅的に、裏と表が螺旋状に絡まる。


好きとか嫌いのレベルじゃない。

大切な、存在が…。
今、この手から、この距離から、遠ざかっていく危機。


私はぎゅうっと手を握り締めて、精一杯の笑顔を作った。


「和登なら、きっと平気」


そう、平気じゃないのは私だけ。
許されない恋をしたのは私だけ。


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