ダメ。俺のそばにいて。




「それに、あの場に星玲奈置いてったら、違う男が寄ってくるでしょ。」



「え…?」




「そんな可愛い格好してるから。廊下とかですれ違う人、星玲奈のこと結構見てた。」




いやそれは、なんで赤ずきんがいるんだろうって不思議さからだと思う…。




「せっかく俺が星玲奈といるのに、取られたくない。」




それなのに、そんな不機嫌そうな顔するの?




拗ねたみたいに、小さく口を尖らせるの?




その横顔にキュンとしてしまって、思わずニヤけそうな唇を弱く噛み締める。




ああ、もう、疲れとか全部どこかにいってしまいそう。




「久遠くんって…、案外色んな表情するよね。」




私がそういえば、グレーの瞳が少し見開かれる。



薄暗い準備室に、微かに入り込む光が久遠くんを照らして…、綺麗。





「初めて言われた、そんなこと。」



「そう?今日だけでも結構色んな顔してたよ。」



「…小さい頃から感情が表に出ないって言われてきたんだけど。」






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