ダメ。俺のそばにいて。






もしかして、人が多いところ嫌なのかな。



今だって誰もいない5階にいるくらいだから。




「何か飲みたいものあるなら買って…こようか…?」



「なんで?」




なんでってなんで!?



元々ここに来たのも真音のためだったから、自販機で何か買ってくるくらい別にいいかなって思っただけなんだけど…。



まさか理由を聞かれるなんて思ってもなかったから、困惑する。




噂には聞いてたけど、やっぱり久遠くんって少し不思議な人かも。




「ん。ミネラルウォーター。」




不意に差し出された拳に、反射的に手を出すとチャリ、と小銭の音がした。



あ、結局頼むんだ。



ミネラルウォーターって、水でいいってことだよね?



そのまま視線を上げると、微かに口角を上げた久遠くんと再び目が合う。



「…お人好し。」



…何も、言葉が出なかった。



からかう口調で言われているのに、靡く髪も柔らかい微笑みも何もかもが…すごく綺麗で。




なんでだろう、…茉優のおかげで美形には免疫があるはずなのに。




ほんの少し楽しそうに笑う君から、目がそらせなかった。





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