ダメ。俺のそばにいて。
「お弁当持った、教科書持った。…よし。」
玄関の全身鏡を覗いて、軽く前髪を整える。
寝癖もないし、今日はいい感じにまとまった!
リボンの傾きを直してから、リビングのお母さんに向かって呼びかけた。
「お母さん、行ってきまーす。」
「行ってらっしゃーい。」
ぴょこっと顔を出して答えてくれたお母さんに口角を上げて、小さく手を振る。
有村 星玲奈。高校2年生。
ミディアムボブの黒髪は自分でもちょっと気に入っていて、164cmの身長は少し高い気もするけれど満足はいっている。
だからといって、自分に自信があるかと言えば別の話。
それは、小さい頃から最強の幼なじみと一緒に育ったせいかも。
ドアの取っ手を押して開くと、朝の明るい光が差し込んでくる。
朝は得意だから、こういう光はなんだか好き。
そう思いながら一歩足を踏み出すと、くりくりの瞳が私を見た。