ダメ。俺のそばにいて。
連続する音が、しなやかな曲を奏でる。
優美で、愛に溢れていて、…それでいて美しい。
そんな曲が音楽室いっぱいに広がる。
すごい…、昨日と同じ感覚…。
心が惹かれて仕方がなくて、ただずっと聴いていたくて…。
やっぱり、…昨日弾いていたのも、久遠くんだ。
当の本人は目の前で表情からは感じられないほど、鍵盤の上で指を素早く移動させている。
だけどそれは決して忙しないわけではなくて、その1つ1つの動作が導かれるように自然で。
「……、っ。」
目を見張った。
ただの変哲のない音楽室なのに。
…君がピアノを弾くだけで、こんなにも鮮やかに空気が染め上がる。