ダメ。俺のそばにいて。
以前に聞いたことがある曲なんだけど、全然印象が違う。
素人の私でもわかる。プロ並み…ううん、プロ以上の腕かもしれない。
思わず呆気にとられていると、最後の1音を優しく押し込んだ久遠くんが閉じていた瞳をゆっくり開ける。
そして、そのグレーの透明な瞳に私を映した。
「…これが、セレナーデ。あんたの名前。」
「この曲がセレナーデ、って…いうの?」
「まあ、そうだね。正確にいうとセレナーデって夕暮れ時に恋人に向かって弾く曲のこと。この曲の場合それが標題なんだけど。」
「そう、なんだ。」
上手く言葉が出なかった。
心臓がバクバクしてる。
目の前で聴いたこの曲が綺麗すぎて、それでいて私の名前…だなんて。
興奮しすぎて、ついていけない…!