ダメ。俺のそばにいて。
「星玲奈、明日もこの時間に帰る?」
「ま、まあ…。準備あるしね…。」
火照りそうな頰を両手で挟みながら、ボソボソと呟く。
茉優は多分下校時間ギリギリまで作業するだろうし、特に予定のない私が茉優を置いて帰れないし。
「ふうん、じゃあ明日も残ろうかな。」
「え?」
「星玲奈と明日も会えたらいいけど。」
もう駅は目の前、なのに、一瞬足が止まる。
そんな私につられて立ち止まった久遠くんの方を向くと、グレーの瞳が私を吸い込む。
「星玲奈といるの、落ち着く。」
ふわっと笑う柔らかな笑顔から、目が離せなくて。
ちょっと待って、…私そんなセリフ慣れてないの。
慌てて目を逸らすと、ハハっと笑い声が聞こえた。
…からかわれてる?それとも、ただ思ったことを言ってる?なにも考えてないの?
凄まじいスピードで動く心臓がバレないように歩き出す。
「く、久遠くんって変わってるって言われない?」
「んー、よく言われる。」
でしょうね!って渾身のツッコミは、高鳴る胸につっかえて出てこなかった。