ダメ。俺のそばにいて。
ガラッと鈍い音を立てて開く音楽室のドア。
一歩踏み入れたら、誰もいない空間が広がっていた。
電気もついてないし、いるわけ…ないよね。
なんで私ちょっとガッカリしてるんだろう。
そんなことを思いながら、ドアの近くにあるグランドピアノに近づく。
…ピアノの鍵盤の蓋っていつも開いてたっけ?
誰かの閉め忘れ?
白い鍵盤にふと触れると、ポーンという音を出した。
「…やっぱり、全然違うな。」
久遠くんが弾く音と。
同じピアノなのに、弾く人によってそんなに変わるもの?
ピアノの椅子に座って、右手をもう一回鍵盤に置くと、なんだか新鮮。
普段ピアノなんて触れないもん。
まあ、曲は全然弾けないんだけど。