ダメ。俺のそばにいて。




テキトーに右手だけ動かしてると、突然「うわ」と後ろから声がした。



「久遠くん…!?」



「かなりめちゃくちゃに弾いてたね。」




思わず振り返ると、紙パックのストローを咥えた久遠くんがドアにもたれかかっている。



いや、もういないと思ってたのに…、ていうかテキトーに弾いてたのを聞かれてたと思うと恥ずかしいんだけど!




「久遠くん、帰ったか、クラスにいると思ってた…。」



「いや?星玲奈が来る前からここにいたよ。ジュース買いに行ったら、誰かさんが変な曲引いてたけど。」



「曲じゃなくて、テキトーに音出してただけ!」



「ふうん?テキトーにしてもひどかった。」



ええ…、そんなに?


音楽の才能がないことくらい知ってるけど…、いや、そこまで?





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