ダメ。俺のそばにいて。





「ははっ、嘘だよ。変だったのは確かだけど、そこまではひどくはない。」



「変は変なんじゃん…!」



私が言い返すと、久遠くんは楽しそうに肩を揺らす。



…久遠くんがここまで大きく笑うなんて珍しい。



思わずその綺麗な笑顔に釘付けになったら、「ん?」と言われてしまった。




「…なんでもないよ。」



「そ?言っとくけど、テキトーに弾くならせめてこんな感じにして。」




久遠くんがそう言って、近づいてきたかと思えば、私の後ろからそっと手を伸ばす。




高すぎる身長を少し屈めて鍵盤に右手が触れれば、私の顔の近くにふわふわとしたハニーブラウンの髪がくる。



ちょ、ちょっと待って…、後ろから抱きしめられてるみたい……。



いや、久遠くんが右手を鍵盤に添えてるだけで抱きしめられてはないけど!









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