ダメ。俺のそばにいて。
「でも、私やっぱり久遠くんのピアノ本当に好き!」
そう言って、久遠くんの方へ顔を向けた途端、
…………っ、時が止まる。
思いの外近くにあった顔。お互いに動けば触れてしまいそうで。
透き通るグレーの瞳が私を離してくれない。
この前も、難波くんとこんな近さになったりしたけど、…その時とは比べものにならないくらい、胸が締め付けられる。
一瞬にも永遠にも感じた時間の後、動いたのは久遠くんの方だった。
形のいい唇を弧の形にして、微笑む。
その瞬間、私も我に返ってとっさに俯いた。
「星玲奈、耳赤い。」
「え、うそっ、ていうかいいからそんなとこ見なくて…!」
あああ、もう恥ずかしい!
勢いよく右耳を手で塞ぐとクスクスと笑う声。
なんでこんなにプリンスは楽しそうなの…!