ダメ。俺のそばにいて。
手に持った絵は、一般的なスケッチブックのサイズ。
描かれていたのは可愛らしい猫の顔だった。
真音は美術大学狙ってて、2年生で芸術選択を特別に取っているんだっけ。
大抵は私みたいに、芸術選択は1年生で終了しちゃうんだけど。
1年前は消去法で選んだけど、そういえば割と音楽は楽しかったなー。
階段を上がって、音楽室と美術室がある5階にたどり着く。
芸術の授業以来、来たことがないからなんだか久しぶりかも。
5階は日当たりが良くて、すごく明るいし空が近く見えるからまるで異空間だ。
「…………、あれ、誰もいない。」
5階の手前にある美術室の中を覗いてみると、誰も見当たらない。
お昼休みだから、先生もどこか行っちゃったのかな。
まあ、とりあえず机に置いておけばいいよね。
真音も提出するだけでいいって言ってたし。
そう思って元々開いていたドアから入って、教卓のような机に絵を置いておく。
よし。ちゃんと真音の名前も書いてあるし、任務完了!
──……。
「………え?」
そう思ったとき、一瞬耳に小さな音が届いた。