God bless you!~第8話「リコーダーと、その1万円」・・・予算委員会
「先輩、これ、よろしくお願いしまーっす!」
それだけ言うと、ピューッと逃げた。
渡された5冊。
1つを見ると、〝チワワな僕と、の~ぶる先輩♪〟という訳分からないタイトルに、双浜の制服姿で男子2人のポップなイラストが描かれていた。その下に〝BL研究会〟とある。
「なにこれ」
右川が目ざとくやってきて、1冊をもぎ取った。
「マンガだろ」と、俺が言うと、右川はページをパラパラとめくりながら、「うん。かなり腐って発酵してるね。尊いぃ~」と、ページを開いて寄越す。
思わず、息を呑んだ。
さっそく男子2人が素っ裸。抱き合っている。胸をまさぐるとか下半身を責めるとか、AVと大差ない。絵は上手い。素人とは思えないタッチじゃないか。エクセレント!だからこそ、悔しい。……現実、見ようゼ。
「あたし、こういうの、ちゃんと読むのって初めてなんだけど」
「俺も」
確か、2~3年前に勃発した〝BL研究会〟。
よろしくお願いしまーっす!という事は、これは活動報告という猛アピールなのか。これに活動費をくれと?ナメたこと言うな。
「こういうのってさ、相手が女子じゃ駄目なのかな。どうしても?」
「俺に聞くなよ」
そこで右川はイタズラっぽく笑うと、
「チャラ枝さんが見たら、うひゃ!ってワザとらしく喜びそうな気がしない?」
「それより、阿木がどういう反応をすんのか、そっちの方が興味ないか」
「〝普通じゃないわね。常識を疑うわ。理性で説明がつかないでしょ〟とか言いそう」
……似てる。
思わず、噴き出した。それぞれページをめくりながら、お互いがテレ隠しのためか、しばらくは饒舌になる。
その後、静かにページをめくり始めた右川を尻目に……俺は別の1冊を取り上げて、読み始めた。今度は挿絵の多い小説で。
その腕の中に倒れて……気が付いた時は生徒会室の長いソファに寝かされていた。
「せ、先輩。これはっ!」
気が付いて見れば、僕は寝かされているだけじゃなかった。一糸まとわぬ姿に……されている。
「風邪引いた?」
それは、こんな状況下でも落ち着いた、優しい響きで耳許に届いて。
「……あ、いえ。ハイ……あ、それは」
そこで先輩はクスッと笑って、「どっちなの」と、僕の額に手を置いて熱を確かめた。
「熱は無いよ」と、言いながら、先輩は僕の体中を、まるで隅から隅まで熱を確かめるように、舌でなぞる。僕は、もう体中が発熱して、この場に溶けてしまいそうになった。
先輩の下先が、僕の1番熱くて、敏感な部分を捉えたら、もう、何も考えられない。
押し殺そうとした熱が、ここに来て、いっきに押し寄せて……思わず先輩の腕にしがみついたら、何も着ていない自分の生肌から、先輩の体温がふんわりと伝わってきた。
「先輩、ズルいですよ。僕だけが何も着ていなくて」
すると、「すねると可愛いな」と、先輩は自分も生まれたままの姿に変わった。
「僕、ここに……一緒に居てもいいですか。先輩と」
「うん。それが1番安全だよ」
我慢しなくていい……その人は、にっこり微笑んで、僕を強く抱きしめてくれた。
「あ……イヤ。そこは……ダメです、もう、はー、あん。先輩っ」
イケメンらしい男子が2人。
結局、どの話も最後は×××に入れるのか。
コイツの片手は、ずっと何やってんだ?
訊きたい事は山ほど浮かんだが、ここで右川に訊く気にはなれない。
色んな意味で、未経験。
「じっくり読むな。仕事しろ」と突っ込みたい所だが、「それ、あんたでしょ」と返り討ちは予測できた。(……3秒後、「あんた、いつまで読んでるの。仕事しなよ」「それ、オマエだろ」とばかりに立場は逆でその通りになった。)
またしばらく大人しくなったかと思うと、右川は不意に顔を上げて、
「ねー、見てこれ。こいつなんて女子じゃん。ホラ、おっぱいあるよ」
「あ?」
うっかり振り返った所で、咄嗟に冊子を引っ込められる。
「あんたがそう来ると、ガチって感じ。黒川より痛いんだけど」
まるで最強の汚物を見る目で、俺を追い払った。
こう言う時、思うのだ。〝おっぱい〟と言われると、特別何の感慨も無いのに、反応しなくてはいけない気になるはどうしてだろう。恐らく、男子の性。それを男子の前で平然と言える女子を目の当たりにして、正直それに1番驚く。
この微妙な空気を、右川はどう捉えているか知らないが、こっちは手に負えない状況にハマらないよう、細心の注意を払って言葉に気をつけているというのに。右川はそんなのお構いなし。取りあえず……おっぱいとか言うな。
右川が放り投げた冊子を見ると、これまたリアルに、それもカラーで仕上げてある。
確かに。
「マジ女子だよな。誰かより大きいし」
思い切って遠回しに嫌味を言ってみたのだが、右川には通じなかったようで、「こいつ、真木くんに似てない?」と話を逸らされては見た所、そう言われたら……そうかな?
気弱そうな、殆ど女子の、その男子。
〝先輩……僕は、もう……はぁはぁ。あっ。あっ。らめぇ~〟
何だろうか、これは。
立て続けに中枢神経を攻撃されるようなキワドイ場面の数々、妙にリアルな裸体、驚愕の行為、チビ顔負けのおっぱい、それらにボンヤリと意識が揺らされて……妙に胸内が騒ぎ始る。
こういう時、思うのだ。
何か良からぬ展開と予感。このまま此処に居たら、イケナイ気がする。
「ちょっと出てくる」と、トイレに立とうとした所、そこに阿木と真木の2人が戻ってきてしまった。続けて、桂木と浅枝も入ってくる。
「何て言うか、言い訳を回収してきたわ」
阿木が愚痴るとは、よほどの事だな。
それぞれ愚痴やら何やらを聞いているうちに、大分こっちの気が逸れた(?)。
「さっそく真面目に回答が戻ってきた所、ある?」
「陸上とサッカーは何とかなりそうって。野球部は来週になりそうだって」
「書道部さんと文芸部さんは、部長さんが居ないとかで。でも明日持ってくるらしいです」
真木の台詞を聞いて、俺は思わずプッと吹き出した。
その昔、慣れない頃、浅枝が何でも〝さん〟付けだった。何なのかワケも分からず一緒になって真木も笑い始める。
それを横目で見ながら桂木は、
「なーんか、嫌な感じ。男子同士でツルんじゃってさ。キモーい」
「ね、右川?」と同意を求められた右川は、「キモいと言えば、沢村がこういうの貰ったよ」
冊子を開いて、これまた1番過激な場面を晒した。(俺が貰った訳じゃない!)
真木は絶句した。
「うっわー」と、桂木は動揺しながらも大喜び(?)である。
注目の阿木と浅枝は、その反応に温度差はあるものの、「信じられない」と、ただただ、ページをめくって……こういう時、思うのだ。男子が感じるクソほどの嫌悪感を、女子は全く感じていない。(ナゼだ?)
あの3人組。
「そいつら真木を探して来たよ」
「えぇー」
「真木くんさ、狙われてんじゃないの」と、右川にツン!と脇腹を突かれ、真木は見事に、「うぎっ!」と飛び跳ねた。
色々と狙われている真木が、気の毒で仕方ない。
そこに、「入るよ~」と1人の同輩女子が飛び込んできた。
それだけ言うと、ピューッと逃げた。
渡された5冊。
1つを見ると、〝チワワな僕と、の~ぶる先輩♪〟という訳分からないタイトルに、双浜の制服姿で男子2人のポップなイラストが描かれていた。その下に〝BL研究会〟とある。
「なにこれ」
右川が目ざとくやってきて、1冊をもぎ取った。
「マンガだろ」と、俺が言うと、右川はページをパラパラとめくりながら、「うん。かなり腐って発酵してるね。尊いぃ~」と、ページを開いて寄越す。
思わず、息を呑んだ。
さっそく男子2人が素っ裸。抱き合っている。胸をまさぐるとか下半身を責めるとか、AVと大差ない。絵は上手い。素人とは思えないタッチじゃないか。エクセレント!だからこそ、悔しい。……現実、見ようゼ。
「あたし、こういうの、ちゃんと読むのって初めてなんだけど」
「俺も」
確か、2~3年前に勃発した〝BL研究会〟。
よろしくお願いしまーっす!という事は、これは活動報告という猛アピールなのか。これに活動費をくれと?ナメたこと言うな。
「こういうのってさ、相手が女子じゃ駄目なのかな。どうしても?」
「俺に聞くなよ」
そこで右川はイタズラっぽく笑うと、
「チャラ枝さんが見たら、うひゃ!ってワザとらしく喜びそうな気がしない?」
「それより、阿木がどういう反応をすんのか、そっちの方が興味ないか」
「〝普通じゃないわね。常識を疑うわ。理性で説明がつかないでしょ〟とか言いそう」
……似てる。
思わず、噴き出した。それぞれページをめくりながら、お互いがテレ隠しのためか、しばらくは饒舌になる。
その後、静かにページをめくり始めた右川を尻目に……俺は別の1冊を取り上げて、読み始めた。今度は挿絵の多い小説で。
その腕の中に倒れて……気が付いた時は生徒会室の長いソファに寝かされていた。
「せ、先輩。これはっ!」
気が付いて見れば、僕は寝かされているだけじゃなかった。一糸まとわぬ姿に……されている。
「風邪引いた?」
それは、こんな状況下でも落ち着いた、優しい響きで耳許に届いて。
「……あ、いえ。ハイ……あ、それは」
そこで先輩はクスッと笑って、「どっちなの」と、僕の額に手を置いて熱を確かめた。
「熱は無いよ」と、言いながら、先輩は僕の体中を、まるで隅から隅まで熱を確かめるように、舌でなぞる。僕は、もう体中が発熱して、この場に溶けてしまいそうになった。
先輩の下先が、僕の1番熱くて、敏感な部分を捉えたら、もう、何も考えられない。
押し殺そうとした熱が、ここに来て、いっきに押し寄せて……思わず先輩の腕にしがみついたら、何も着ていない自分の生肌から、先輩の体温がふんわりと伝わってきた。
「先輩、ズルいですよ。僕だけが何も着ていなくて」
すると、「すねると可愛いな」と、先輩は自分も生まれたままの姿に変わった。
「僕、ここに……一緒に居てもいいですか。先輩と」
「うん。それが1番安全だよ」
我慢しなくていい……その人は、にっこり微笑んで、僕を強く抱きしめてくれた。
「あ……イヤ。そこは……ダメです、もう、はー、あん。先輩っ」
イケメンらしい男子が2人。
結局、どの話も最後は×××に入れるのか。
コイツの片手は、ずっと何やってんだ?
訊きたい事は山ほど浮かんだが、ここで右川に訊く気にはなれない。
色んな意味で、未経験。
「じっくり読むな。仕事しろ」と突っ込みたい所だが、「それ、あんたでしょ」と返り討ちは予測できた。(……3秒後、「あんた、いつまで読んでるの。仕事しなよ」「それ、オマエだろ」とばかりに立場は逆でその通りになった。)
またしばらく大人しくなったかと思うと、右川は不意に顔を上げて、
「ねー、見てこれ。こいつなんて女子じゃん。ホラ、おっぱいあるよ」
「あ?」
うっかり振り返った所で、咄嗟に冊子を引っ込められる。
「あんたがそう来ると、ガチって感じ。黒川より痛いんだけど」
まるで最強の汚物を見る目で、俺を追い払った。
こう言う時、思うのだ。〝おっぱい〟と言われると、特別何の感慨も無いのに、反応しなくてはいけない気になるはどうしてだろう。恐らく、男子の性。それを男子の前で平然と言える女子を目の当たりにして、正直それに1番驚く。
この微妙な空気を、右川はどう捉えているか知らないが、こっちは手に負えない状況にハマらないよう、細心の注意を払って言葉に気をつけているというのに。右川はそんなのお構いなし。取りあえず……おっぱいとか言うな。
右川が放り投げた冊子を見ると、これまたリアルに、それもカラーで仕上げてある。
確かに。
「マジ女子だよな。誰かより大きいし」
思い切って遠回しに嫌味を言ってみたのだが、右川には通じなかったようで、「こいつ、真木くんに似てない?」と話を逸らされては見た所、そう言われたら……そうかな?
気弱そうな、殆ど女子の、その男子。
〝先輩……僕は、もう……はぁはぁ。あっ。あっ。らめぇ~〟
何だろうか、これは。
立て続けに中枢神経を攻撃されるようなキワドイ場面の数々、妙にリアルな裸体、驚愕の行為、チビ顔負けのおっぱい、それらにボンヤリと意識が揺らされて……妙に胸内が騒ぎ始る。
こういう時、思うのだ。
何か良からぬ展開と予感。このまま此処に居たら、イケナイ気がする。
「ちょっと出てくる」と、トイレに立とうとした所、そこに阿木と真木の2人が戻ってきてしまった。続けて、桂木と浅枝も入ってくる。
「何て言うか、言い訳を回収してきたわ」
阿木が愚痴るとは、よほどの事だな。
それぞれ愚痴やら何やらを聞いているうちに、大分こっちの気が逸れた(?)。
「さっそく真面目に回答が戻ってきた所、ある?」
「陸上とサッカーは何とかなりそうって。野球部は来週になりそうだって」
「書道部さんと文芸部さんは、部長さんが居ないとかで。でも明日持ってくるらしいです」
真木の台詞を聞いて、俺は思わずプッと吹き出した。
その昔、慣れない頃、浅枝が何でも〝さん〟付けだった。何なのかワケも分からず一緒になって真木も笑い始める。
それを横目で見ながら桂木は、
「なーんか、嫌な感じ。男子同士でツルんじゃってさ。キモーい」
「ね、右川?」と同意を求められた右川は、「キモいと言えば、沢村がこういうの貰ったよ」
冊子を開いて、これまた1番過激な場面を晒した。(俺が貰った訳じゃない!)
真木は絶句した。
「うっわー」と、桂木は動揺しながらも大喜び(?)である。
注目の阿木と浅枝は、その反応に温度差はあるものの、「信じられない」と、ただただ、ページをめくって……こういう時、思うのだ。男子が感じるクソほどの嫌悪感を、女子は全く感じていない。(ナゼだ?)
あの3人組。
「そいつら真木を探して来たよ」
「えぇー」
「真木くんさ、狙われてんじゃないの」と、右川にツン!と脇腹を突かれ、真木は見事に、「うぎっ!」と飛び跳ねた。
色々と狙われている真木が、気の毒で仕方ない。
そこに、「入るよ~」と1人の同輩女子が飛び込んできた。