この恋。危険です。
今日は久しぶりに'Canon'へのみにいった。
本当ならもっと前に行きたかったのだけれど、竹中先生と遭遇しないように気をつけていたらなかなか来れなかった。
今日は、学会で出張だから、彼は来ないはず。
「いらっしゃい。久しぶりだな。」
入店した私にたくやが声をかける。
「んー。ちょっとね。」
やっぱり座るのは、カウンターの一番奥。ここが一番落ち着く。
「今なら、他にお客さんいないし、ゆっくり聞けるよ?」
カイと仕事で会ったことを言ってもいいのかどうか迷う。
でも。カイと引き合わせたのはたくやだ。
「たくやはさ。カイって知ってるよね?私がたまに一緒にのんでた人。」
「あぁ。」
「私ね。カイに会ったの。仕事先で。」
たくやは驚いた様子もなく話を聞いている。
「彼ね、ドクターだったの。それに、結婚してた。」
「それはないな。」
へっ?!
たくやがしまったと言うように口をおさえる。
「あ、いや。なんでもない。」
「たくやはカイのことなにか知ってるの?」
「いや。俺は結婚してるとは聞いてなかったなって思っただけ。」
たくやに聞いたところで、たくやが知っているお客さんの情報を言ったりしないのはわかってる。
「友里は、何に悩んでるの?もしかして、カイのことを好きになった?」
たくやがストレートに聞いてくる。
「うん。ここで出会ったときからいいなって思ってたの。でも、仕事をしてる彼はもっと素敵だった。」
でも、、
「彼は指輪をしてた。しかも、'大切な人がいる'って、女の子たちの誘いを断ってたの。それって、奥さんのことでしょう?」
たくやは困ったように笑ってる。
「でも、友里は、結婚してることを直接確かめたわけじゃないんだろう?」
それは、そうだけど……
「そうとしか、考えられないでしょ?」
「まぁ、状況としてはそうだな。」
それに、
「私は、私を見てくれる人と付き合いたい。不倫相手になりたいわけじゃないもの。」
もともと、ドクターなんて信用できないと思ってた。
不倫や浮気に巻き込まれたくない。
竹中先生は違うのかもしれないけれど。
「私はドクターとは、恋愛しないから。」
そう。ドクターとは、恋愛しない。既婚者なんてなおさらのこと。
彼を好きだと思う気持ちは、何かの間違い。
きっとすぐに忘れる。
その程度の想い。