この恋。危険です。
あの夜勤の日から数週間。
また、当直の竹中先生と一緒になった。
「今日もよろしくね。今日は穏やかだといいね。」
そんな風に声をかけられる。
「あのときは、ほんとにお世話になりました。」
いろんな意味で……
助けられた。
励まされた。
抱き締められた。
「いえいえ。あの患者さんも大丈夫だったしね。」
そう。あの患者さんはICUで1日だけ管理された後、病棟に戻ってきた。
出血の理由は術中の止血が甘かったことが原因らしい。
「ほんとに。よかったです。」
「絶対大丈夫って言っただろう?」
竹中先生はそう言って微笑む。
「そうでしたね。では、今日もお願いします。
先生もムリせず、ちゃんとご飯食べて休んでくださいね。」
「そうするよ。」
彼は照れ臭そうに笑った。
今日の夜勤は2年目看護師と2人。
この間のようなことがないことを祈るばかり。
幸いにも今日は手術日じゃないから、術後数日経過した患者しかいない。
夜中の2時。
今のところ、何の問題もなく過ごしている。
2年目看護師は、休憩に入った。
竹中先生も今日は、当直室に行ったらしい。
『何かあったら呼んで。』
と、声をかけて出て行った。
ナースステーションに一人。
業務をこなしていくけれど、この間のことを思い出して、怖い。
また、何かあったら…
どうしてもそう考えてしまう。一人の空間が心細かった。
コツコツ、と足音が聞こえる。
患者さんかな?
夜中、『眠れない』とナースステーションを訪ねてくる患者さんも時々いる。
対応しようと顔を上げると、そこにいたのは竹中先生だった。
「あれ?どうしたんですか?」
『何かあったら呼んで。』とは、言われたけど、何もないから呼んでない。
彼は私の顔を見ると、優しく微笑む。
「上原さんが心細いかなと思って。」
私のため?
「ありがとうございます。」
竹中先生がいると思うだけで心強い。
「何かあったら、お願いします。」
そういうと彼は、また優しく微笑んだ。