この恋。危険です。

約束の19時を15分程過ぎた頃。

「ごめん。遅くなった!!」
さくらが私のいる個室に駆け込んでくる。
仕事終わりにそのまま来てくれたらしい。
「いいよ、いいよ。気にしないで。」
看護師の仕事が時間通りに終わらないのはよくあること。
19時という、定時よりも2時間後を指定してきたから、遅くなるだろうと予想はしてた。

さっと、注文を終わらせると次々と料理が運ばれてきた。

「友里が、急に誘ってくるなんて珍しいけど、なにかあった?」
2人で乾杯した後、さくらがビールを飲みながら不思議そうに聞いてくる。
「うーん。ちょっとね。」
なんて、説明すればいいんだろう。自分のこととは言いにくい。それに、さくらは原先生の不倫相手。説明するのに、言葉を選ぶ。

「友達がね。結婚してる人から、『君が大切』とか『本気で落とす』とか言われたらしくて。相談されたんだけど、どう返事していいかわからなかったのよ。で、さくらに聞きたいなぁって。」
こんな感じでいいかな?

さくらをみると、飲んでいたビールを片手に微妙な表情でこっちを見ている。
「相談ってことは、その子は相手を好きってこと?」
「そうみたい。」
というか、'そう'なんだけど。

「そか。」
さくらが困ったように笑う。
「私が言うのもおかしいけどさ。やっぱり、不倫はダメだね。どんなに大切って、言われても。結局、彼の家族には勝てないもん。それでも、いいっていうなら別だけど。
友里は、不倫なんてしたくないんでしょ?」

え?!

驚いて、だし巻き玉子を咥えたままさくらをみる。

「友達の話って相談するのは、自分の話なのが定番でしょ?恋愛に興味なさそうな友里にそんな相談してくる子いないだろうしね。」

さくらが得意そうに言うけれど、当たっているだけに言い返せない。




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