この恋。危険です。
「友里の恋話なんて、珍しいね。しかも、その相手が友里が'絶対嫌'って言ってた既婚者って。びっくりするわ。
で?その、相手は?そんないい人なの?!」
酔いも回ってきたのか、さくらがニヤニヤしながら聞いてくる。聞く気満々で、誤魔化そうにも誤魔化させてもらえない雰囲気だ。
「………竹中先生。」
私の言葉に、今度はさくらがきょとんとする。
「それ、なにかの間違いじゃないの?」
そうだよねー。びっくりだよね。
私もびっくりしたからさくらに連絡したんだよ。
他の人なら、どうでもよくて、たぶん一蹴して終わってた。
枝豆をつまみながらさくらが話す。
「ゆうくん(原先生)が言ってたんだけど、竹中先生ってゆうくんの後輩なんだって。かっこいいのに浮いた話ひとつなくて、詳しく聞いたらずっと想ってる人がいるんだって言ってたらしいよ。」
やっぱりそうなんだ。
『大切な人』そう話す先生は、幸せそうな顔をしていた。
「ゆうくんは、竹中先生が結婚したって話は聞いてないらしいから、その辺りはよくわからないんだけど。でも、そんな人が、誘ってくるなんて思えないよ。」
一人じゃわからないと思ってさくらに相談したけれど、竹中先生が考えてることは、やっぱり全然わからない。
「…………冗談とか?」
冗談をいっているような様子ではなかったけれど。(希望も込めて)その可能性が1番高い気がする。
そういえば、一緒に働き始めたときも、『よろしくね』なんて、意味深に言われたけれど、なにもなかった。きっと、今回もそれと同じ。
「冗談か本気かは置いといて。友里はなにを悩んでるの?冗談か本気かで友里の対応は変わるの?」
それは、、
「変わらない。」
そうだった。
浮気や不倫相手にはなりたくない。私は幸せな恋愛がしたい。
それに。
基本的にドクターなんて信じられない。
竹中先生は違うと、誠実な人だと思いたいけど。
「なら、答えは出てるじゃん。『誘われても断る。相手にしない。』いくら気になる相手でも、ちゃんとはっきりしとかないと。いや、気になる相手だからこそかな?」
さくらに言われると耳が痛い。彼女の言葉はきっと'経験者は語る'というやつだ。
「ん。わかった。聞いてくれてありがとう。」
竹中先生の言葉に惑わされたりしない。ちゃんと断る。
そう心に決めた。