この恋。危険です。

着替えを済ませ、駅へ向かう。
ふと、駅の入り口で壁にもたれかかる人影が目に入った。

あ、竹中先生だ。

大勢の人が行き交うなかで、好きな人は自然と目に入る。すごく不思議だけど、よくあること。

こんな時間にあんなところにいるなんて、待ち合わせかなにかかな?
さっきのお礼を言おうと近づいたけれど、、、

「ごめん。お待たせっ!!」

えっ?!

彼に走り寄る女の人。
「いいよ。仕事お疲れ。行くか。」
竹中先生が彼女に優しく声をかける。
「うん。」

立ち竦む私に気づくことなく、2人は並んで改札の奥へと入っていく。
声は聞こえないけれど、女性の言葉に彼が嬉しそうに幸せそうにはにかむ様子が見えた。
最初に交わしてた言葉からも雰囲気からも、竹中先生とあの女性(ヒト)が仲が良いのが伝わってくる。

呆然と見送る私の目に入ったのは、
彼女の指に光る指輪だった……

あの女性が、竹中先生の奥さんなのか。
とてもきれいな女性だった。彼はあーいうのが好みなんだ。
竹中先生が想い続けるのも、他の女性なんか目に入らないのもわかる気がする。
並んでいて、お似合いだった。
正に、美男美女のカップル。

それに比べ、地味姿の私。
着飾ったところで、あの女性にはかなわないけれど。
すごく、自分が惨めだった。

胸の奥がずきずきする。
公然と彼の隣に立てる彼女にイライラする。
私だって、彼のことが好きなのに。

怒り、憎しみ、嫉妬。
自分の中に渦巻く負の感情が抑えられない。

彼の近くで、彼が幸せそうに話す様子なんかみたくない。
幸せな話なんて聞きたくない。

溢れてくる負の感情に、きっと私が耐えられなくなってしまう。


この日を境に、私は彼を避け始めた。
< 29 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop