この恋。危険です。

「ありがとうございました。」
「お大事に〜。」
患者さんが処置室を出ていく。
急いで、使った器械を片付けようとするけれど、

カチッ

えっ?!今鍵閉めた?!

驚いて、竹中先生の方を見るとばっちり目があった。
優しく微笑まれるけれど、目が笑ってない。
「さて。友里。俺を避けてた理由を教えてくれるかな?」

やっぱり。それが目的だったんだ。

彼がジリジリ距離を詰めてくる。私も後ろに下がるけれど、狭い処置室に逃げ場なんてない。壁際まで追い詰められた。
「き、、気のせいじゃないですか?」
誤魔化そうとしたけれど、それがいけなかったらしい。

彼が、どんっと私の頭の両脇に手をつく。
「気のせいのわけないだろ。」
体勢としては、所謂'壁ドン'な訳だけれど、
怖い。怖すぎる。逃げ場なく追い詰められることがこんなに怖いなんて。
「それに、避け始めた頃から、見た目も変えただろ。なんでだよ。見せたいやつでもできたのか?!」

え?なにそれ。
なんで、そんな嫉妬みたいなこと言うの?!
誰のせいだと思ってるの?!

だんだんと怒りが込み上げてくる。
睨むように彼を見上げる。
「なんで……なんで、私に構うの?!」

「好きだからに決まってるだろ。」
は?!
「うそだ!!!」
「なんでだよ。俺ちゃんと言ったよな。大切なのはお前だって。」
それは、言ってた。言ってたけど……
「お………さ…いる……に。」
「なんだよ。はっきり言えよ。」
彼の口調がイライラしてる。

あんなに大切そうに、愛しそうに話すくせに。
「おくさんいるくせに!!!そんなこと言うなんて最低。信じられない!!もう、私に構わないで!!!」
「は?!」

彼が怯んだ隙をついて、突き飛ばす。急いで、処置室から逃げたけれど、彼は追ってこなかった。

トイレの個室に籠る。
涙が溢れて止まらない。
感情がぐちゃぐちゃで、全然整理できない。

ただ一つ間違いのないことは。
竹中先生も他のドクターと同じだったということ。

やっぱり。

ドクターなんて。信用できない。
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