この恋。危険です。
なんとか気持ちを落ち着けて、仕事に戻った。
仲のよい2つ下の同僚が心配そうに声をかけてくる。
「友里さん大丈夫ですか?竹中先生が、友里さんが気分悪そうだったって言ってて……」
今、その名前出さないで欲しい。
「あー。うん。ちょっと気持ち悪くなっちゃって。」
そういうと、彼女が困ったように笑う。
「友里さん、いつもがんばりすぎですよ。 無理しないでちゃんと頼ってください。処置室の片付けはしときました。」
それは、素直に助かる。
「ありがとう。」
「いいえ。今日はちゃんと定時であがってくださいね。もし、なにか残ってたら、私変わりますから。」
そういうと、彼女は自分の仕事に戻る。
こういう時、信頼できる同僚がいるのはいいなと思う。
普段なら、他の人のフォローもするのだけれど、
言葉に甘えて、今日は自分の仕事だけ終わらせて帰ることにする。
今は何も考えたくない。家に帰ってゆっくり休もう。
着替えを済ませ、職員用出入口から出る。
「おい。」
いきなり腕を捕まれた。
びっくりして見ると竹中先生が怖い顔をしている。
怯んじゃだめだ。
「なんですか?」
「お前は何か誤解してる。」
「なんのことですか?」
「はぁ……」
私の反応に、大きくため息をついた後、
「行くぞ。」
強引に腕を引っ張って歩いていく。
「痛いっ!!やめてください。」
振りほどこうとするけれど、全部離してくれない。
「離したら逃げるだろ。それとも、ここで話するか?お前が噂になってもいいなら、俺はそれでもいい。」
噂……竹中先生と?
それは、嫌だ。
でも。
「私に話はありません。」
「俺はある。」
言葉につまる。
こんなやり取りをしてる間にも、何人か職員が帰っていく。
これ以上ここにいたらほんとに噂の的になってしまう……
これ以上は逃げられない。
「わかりました。」
私の言葉に彼はほっとしたように笑った。
「なら、行くぞ。」
そういうと、彼は私の手をとって歩き始める。その手に、先ほどまでの強引さはなかったけれど、振りほどくことはできなかった。
彼はどういうつもりなんだろう。
私をどこへつれていくつもり?