この恋。危険です。

そうだ。それだ。
さくらが言ってた。
ーずっと想ってる人がいるんだって言ってたらしいよー

それが、私のわけないんだから。
「ずっと想ってる人がいるって聞いたけど?」
私の言葉に先生は、きょとんとした表情をする。
「誰に?」
「峰山さくら。彼女が原先生から聞いたって。」
「あの人、相変わらずおしゃべりだな………」
彼が少しだけ苦い顔をする。
「でも、それは否定しない。」
やっぱり、私が好きなんてうそじゃん。

「俺はずっと友里のことを想ってる。」
は?!
「なに言ってるの?私たちが会ったのなんてせいぜい1年足らずでしょ?」
「ここで会ったのはな。」
彼が意味深に言う。

「友里と初めて出会ったのは、ここじゃない。」

えっ………
「どういうこと?」
「山北大学、南キャンパス。」

山北大学?!私の母校。
「友里と初めて会ったのは10年位前。山北大学の受験の日。」

???
「受験会場に向かう途中、俺はキャンパス内で迷ったんだ。焦れば焦るほどどうしていいかわからなくて。困ってたところに君が声をかけてくれた。」

あ……それ、覚えてる。

受験の日、地図を持っておろおろしてた男の子に声をかけた。
『大丈夫?医学科なら、この道まっすぐ行って右側に案内出てたよ?看護科なら一緒に行こ?』
そういうと、ほっとしたように笑った顔がかっこよかったのを覚えてる。
『ありがとう。お互い、がんばろうな。』
そう言って、医学科の試験場の方に歩いていった。

入学して、しばらくは'あの男の子はどうなったのかな?'なんて思ってた。もし、また会えたら話したいなって思って医学科生を気にしてたけど、結局わからなかった。今でも受験シーズンになると、ふと思い出す。彼は、どうしているのかな……なんて。

あれ?ということは……
「あの子が、竹中先生だったの?!」
私の反応に、竹中先生は一瞬驚いた後、嬉しそうに微笑んだ。
「友里も覚えてたんだ。」

彼が、照れくさそうに、懐かしそうに話をする。
「一目惚れだった。名前もわからない彼女にもう一度会いたくて、必死で問題を解いたよ。再会したらお礼を言いたかった。できれば、仲良くなりたいと思ってた。
キャンパスで、彼女を見かけたときは、本当にうれしかった。見かけるたび、どんどん好きになっていった。」

私を見る目はとても柔らかくて愛しさに溢れていて……

「気づいてたなら、話しかけてくれたらよかったのに。」
私は彼を見つけられなかったから。私だって話したかった。
「ずっと、話しかけたかったけど、接点もないし、忘れられてるかもしれないと思うと勇気も出なかったんだ。結局、一言も話さないまま君は卒業していった。」
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