この恋。危険です。

そこで、彼は大きく息を吐くと私を見た。
「ここで、初めて話した日のことを覚えてる?」
「うん。」
もちろん。
「シャンパンベースのいちごのカクテル。あれさ、たくやさんに前からお願いしてたんだ。もし、君が俺の好きな人なら、話すきっかけが欲しいんだって。」

どういうこと?

きょとんとする私に、彼驚いた顔をする。
「たくやさん、合意がないのに他のお客さんさんからってお酒を出すことはしないんだよ。知らなかった?」

知らなかった……

「無防備ないとこを守るためって言ってたけど。友里のことでしょ。そうじゃなきゃ、今まで何杯もいろんなお客さんからって出されてるよ。」
「そんなことは……」
ないと思う。
「あるよ。友里が気づいてないだけ。たくやさんが心配するはずだよ。」
困ったように笑う。

「たくやさんは、俺の気持ちを知った上で俺の無茶なお願いを1度だけという条件つきで叶えてくれると約束してくれたんだ。」

驚いてたくやの方を見る。彼との出会いにはたくやも1枚噛んでたなんて…

「あの日、君が後から来たときは『しまった』って思ったよ。君の席に座ってたから。どこに座るんだろうって思ってたら、1つ空けた席に座ってきた。フルーツを眺める君をみて、確信したよ。
だから、たくやさんに'約束の1杯'をお願いした。」

たくやには、受験の日の話をしたことがある。
竹中先生の話を聞いて、私のことだと気づいてたはず……
たくやは、最初から知ってたんだ。
竹中先生の気持ちも、その相手が私だということも。
たくやがあの日見せた'大丈夫'の合図の理由がやっとわかった。

「初めて、話ができてうれしかった。名前も。本名かどうかもわからなかったけれど。君の名前を知れたことがうれしかった。在学中はそれすら叶わなかったから。
それから、会うたびに話すようになって。君のことをどんどん好きになっていった。」

それは、私も。
Canonで会って、'カイ'のことが好きになった。彼にどんどん惹かれていった。

「でも、Canonでのことはなんとなく現実とは思えなくて。心地よくて。ずっとこのままで居たかった。現実で繋がったら、この関係が壊れるような気がしてたから。」

'カイ'も同じように思ってたんだ。
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