この恋。危険です。


私の考えを読んだように、彼がほほ笑む。
「そんなに警戒しないでください。飲んだからって、見返りとか求めたりしませんよ。」

どうしたらいいかわからくて、たくやをみるとにっこり笑っていた。
これは、たぶん”大丈夫”の合図。
安心して、カクテルに口をつける。

「美味しい。」

シャンパンベースにいちごを使った、甘酸っぱいカクテル。
「美味しいです。ありがとうございます。」
「よかった。じっとフルーツを見てたから、それにしたのですがあたりだったようですね。」
なぞなぞを解いた子供のように、うれしそうに笑っている。

ついついその笑顔に絆されて、もっと話してみたくなった。

けれど。

ピリリリ。。
「失礼。」
彼のスマホに電話がかかってきたらしい。顔つきが真剣なものに変わる。
「もしもし。はい。はい。すぐに向かいます。」
彼は電話を切ると、再び柔和な笑顔を私に向ける。
「すみません。もう少しお話したかったのでが、トラブルで呼ばれてしまいました。よければお名前だけでも教えていただけませんか?」
私も知りたい。でも、本名を言うのは躊躇われて。
「”ゆかり”です。」
「”ゆかり”さんですね。僕は”カイ”と言います。ぜひ、またお話ししましょう。」
そういうと彼は帰っていった。

”カイ”さんか。それが、苗字なのか名前なのか、はたまた偽名なのかも分からないけれど。
また、彼に会いたい。
そう思う。

たった、数分一緒にいただけ。少し話をしただけ。
なのに。
まだ、名前を付けるには早いけれど。彼への気持ちが芽生えていた。


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