さよなら、大好きな人
私はゆっくりとした足取りで、街の外へと向かって歩いていた。
朝早いこともあり人はほとんどおらず、静かな雰囲気に包まれていた。その雰囲気の中でそっと空を見上げながら街に来てからのことを思い出す。
アンナさんに出逢って、仕事を引き受けて。その途中で、ラウルに初めて出逢った。
その時は道に迷っていた自分に優しく教えてくれて、あの時はラウルと仲良くなるだなんて思いもしなかった。
でも、それから偶然にもラウルと再会して、色々な話をした。
自分の過去の話、ラウルの過去の話、他愛のない日常の話や旅の話。色々な話をして、ラウルのヴァイオリンも聴いた。
そして、ロイと再会してミアさんとも出逢った。
そう言えばその時もずっとラウルが一緒にいてくれて、あの結婚式のときもずっと傍に居てくれた。
――今思えば、この街に来てからラウルがずっと一緒に居てくれたような、そんな感覚すらある。