さよなら、大好きな人
優しさに触れて、暖かさに触れて、寂しさや辛さに触れて、いつしか誰よりも安心出来る存在になっていた。



ロイが結婚式のときに自分に告げた言葉の意味はわかっているつもりだ。

目を背けようとしても背けられないほどに、ラウルの存在が自分の中で大きくなっていた。



でも、自分は旅人で。ラウルはこの地から離れることは出来ない。

どちらにしろ一緒に居られない存在ならば、告げずに終わる想いがあってもいいような気がして。だから急ではあったが、今日旅立つことに決めた。



ラウルに逢ってしまえば、もしかしたらふとした瞬間に想いを口にしてしまうかもしれないから。



私は苦笑を一つ零しながら街の外が見えてきたのを見て、やはり胸が痛み、寂しさが押し寄せてきて泣きそうになるのを必死に堪えながら一歩一歩を歩いていた時だった。



「……、っ‼」

「……?」



ふと、静かな街に誰かの声が響いたような気がして思わず足を止めて振り返る。

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