さよなら、大好きな人
必死に言葉を紡ぐ私の言葉が信じられないとばかりに、ラウルは思わず一つ言葉を漏らす。

抑えきれなくなったように私が言うと、ラウルは何も言わずに言葉を詰まらせた。



困らせてしまった、と私は泣きそうになるとその場から逃げるように走り出そうとしたその瞬間。


ふわりと後ろから包まれる感覚があった。私は最初何がなんだか理解出来なかったものの、すぐに理解をする。

――後ろからラウルに抱き締められたのだ、と。



いきなりのことに私は身体を硬くさせることしか出来ず。

ラウルも私がそうなったのがわかったのか一瞬離すべきかと抱き締める力を弱めるが、すぐにその力を元に戻す。



「俺も、好きだよ、ティナのことが」


「……え?で、でも」


「うん、愛することがわからないっていうのは本当だよ。……だからティナに対して芽生えた想いが、何なのかわからなかった。全部初めてだったから」


「……」

< 104 / 108 >

この作品をシェア

pagetop