さよなら、大好きな人
「でも、きっとこれが俺の“初恋”だと思う。――ヴァイオリンを君に聴かせたあの日から、ずっと好きだったよ」


「ラ、ウル……」



上から降って来た言葉にティナは驚きで目を見開かせながら震える声で何かを紡ごうとするが。

何を言おうとしているのかわかったのか、ラウルはゆっくりと言葉を紡ぐ。



嘘偽りなく信じて貰えるようにと囁くように言うラウルに、私は信じられないとばかりに名前を呼ぶ。

僅かにラウルの身体が震えているのがわかり、真実だと思えた。


だからこそ、そっと腕に触れようとしたが、はっとしたように思い出して離れようとしたが。



決して離そうとはせずに、ラウルは抱き締める力を強める。



「ラウル。私、は……」


「絶対に離さない。……ずっと、俺の、傍に居て欲しい」


「……」


「俺はここからは離れられない。……もう誰も、失いたくはないんだ」

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