さよなら、大好きな人
どちらかといえば、アンナさんに迷惑をかけそうな気がするのだけど。

人の好意を無下に扱うことも出来なかった私は、握られていない手をそっとアンナさんの手に乗せてこくりと頷く。



「じゃ、じゃあ、折角ですし……お願いします」


「ふふ……、じゃあ、短い間かもしれないけれど家族としてよろしくね、ティナちゃん。堅苦しい敬語とかは使わなくていいから」


「は、はい。じゃない……うん‼」



私から返って来た答えにアンナさんは心底嬉しそうな微笑みを浮かべている。

改めてという感じに言われた言葉に、私は釣られるように微笑みながら元気よく頷いた。



――良い人に出逢えた。

だから少しの間ぐらいなら留まってもいいかもしれない。


胸に生まれた小さな暖かさにそう思ってしまった。



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