さよなら、大好きな人
アンナさんの家に泊まり、朝になれば朝食を済ませ店へと向かう。
これが朝の始まりのようで、私もそれに倣うように着いて行く。
とは言っても花屋の仕事などした事がないと言えるぐらいに経験はないので、ほとんどがアンナさんからの指示で慣れない手付きで進めていった。
店の仕事をしていれば店の常連だろう人達が声を掛けてきて、アンナさんはそんな常連たちに私を紹介してくれた。
大きな街なのに人の繋がりを失わずに暖かった。とても良い街だと、来たばかりの私は小さく笑みを零す。
この街にいれば忘れられるかもしれない。忘れなくちゃいけない思い出を、心の中から消してしまえるかもしれない。
そうすればもう旅をする理由だってなくなるし、どこかの街に落ち着ける。
そんな淡い期待を抱きながらせっせと店の仕事をしていた私に、アンナさんが声を掛けてきた。
「ティナちゃん。配達をお願いしたいんだけど、構わない?」
「もちろん」