さよなら、大好きな人
このノックの音が聞こえればいいが、聞こえなければ一応は声を掛けよう。見知らぬ人の声が聞こえれば驚くかもしれないが、それはそれで仕方ない。


そう思いながら少しの間待っていたのだが、がちゃと音を立てて扉が開く。



「はい?」


「……あっ‼」


「あれ……、君は昨日の?」



扉を開いて出てきた青年に見覚えがあった。

思わず声を上げた私に、青年は少々驚いた顔をしながらもふと思い出したように首を傾げて確認するように聞く。


私はこくりと頷いて肯定をしながらも、あまりの偶然に何とも言えない感情に包まれる。



――そう、青年が言った通りに、昨日花畑までの道を教えてくれた人だったのだ。


あの時はろくなお礼を言えなかったし、もしどこかでばったりと会えるのであれば改めてお礼を告げようと思っていたのに。

まさか配達先に居るとは思わなかったので苦笑を浮かべた。

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