さよなら、大好きな人
何かを言わなければいけないと思いながらも何を言えばいいかわからず。

ふと思い出して、手に持っていた花束をすっと差しだした。



「あの、これ、配達に……」


「うん?ああ……、アンナさんの所を手伝ってるんだね。ありがとう」



差しだしながら告げた言葉に青年はどこか合点がいったように頷く。

ふわり、と柔らかく微笑みながら花束を受け取ると礼を述べた。


見えた微笑みに私は僅かに顔を赤らめながらふるふると首を横に振って、顔を隠すように不自然じゃない程度に俯く。



――まさか、あんなにも優しい微笑みを向けられるとは思って居なかったので思わず顔が赤くなってしまった。


私は自分の頬に手を当てながら必死に赤みを引かせようとしていると、ふと青年は私へと視線を向ける。



「君は、旅人さん?」


「え?あ、は、はい。近々行われるっていう結婚式を見るまで、アンナさんの所にお世話になってて」

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