さよなら、大好きな人
「そうなんだ。俺は、ラウル。アンナさんの花屋の常連って所だよ。君は?」


「えっと、ティナ、です」


「ふふ……いいよ、敬語じゃなくて。年近いと思うし」


「あ……じゃあ、お言葉に甘えて」


「うん」



敬語を外した私に対して、青年――ラウルは柔らかな、嬉しそうな微笑みを浮かべて頷いた。


纏っている雰囲気は柔らかく優しくて、暖かくてどこかあの人に似ている。

私は何気なくそう思った自分の考えを振り払うようにふるふると頭を振った。



目の前に居る人と、忘れなくちゃいけない人は別人。

どれだけ雰囲気が似ていてもそれはあの人じゃないし、代わりにすることもダメなのだと自分に言い聞かせる。



そんな私の様子を見ていたラウルは僅かに首を傾げながら、ふと何かを思い浮かんだように私へと視線を向けた。



「ねぇ、ティナ?」


「え……あ、な、何?」

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