さよなら、大好きな人
断りの言葉を口にした私に対して、気を悪くした様子は見せずにどこか納得したようにラウルが頷く。



「ああ、そっか。アンナさんのお手伝いをしてるんだよね。――うーん……、アンナさんの店に行けばティナは居るんだよね?」


「う、うん。今は泊めてもらってる立場だから、何も無い限りは居ると思うけど」



考える仕草をしながら聞いてくるラウルに、私は突然のことに戸惑いながらも焦ったように答えた。



「そう、よかった。じゃあ、近い内に店に顔出すよ。ティナがいつ居なくなるかわからないし」



満足そうに微笑みながら、あっさりと当たり前のように告げるラウル。

「配達ありがとう」「またね」という一つ二つの言葉を返して、家の中へと戻って行ってしまう。



あまりにも突然の行動に私は呆気に取られてしまったものの、不意に笑いが込み上げてきてくすくすと笑い声を漏らした。



雰囲気は似てるのに、行動は全然似てないな。

――でも、それが彼の良い所なのかもしれない。私は何気なくそう思いながら、店へと戻ることにした。



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