さよなら、大好きな人
「ティナちゃん?ええ、居るわよ。

――ティナちゃん、お客さん‼」



アンナさんに大きな声で名前を呼ばれ、私は店の奥から店内へと出て行く。

そこまで大きな声で呼ばなくても奥の方にまでなら声は聞こえているのだが、あえてそこは突っ込まずにいた。



一人で店を切り盛りしているのであれば気付かなくても仕方ないことだし、特に名前を呼ばれて困る訳でもない。


私はそう思いながらお客さん、つまりはラウルの近くまで来ると僅かに首を傾げながら、自分よりも身長の高いラウルを見上げる形で見る。



「どうかしたの?」


「ああ、昨日の話。旅の話を色々と聞かせて欲しいなって言ったでしょう?」


「え?う、うん、言ってはいたけど……」



昨日の今日で訪ねてくるとは思わなかったので、私は驚いて目を瞬かせながら少々困ったようにアンナさんへと視線を向けた。

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