さよなら、大好きな人



仕事をしているからかラウルが何か話しかけてくることはない。

少々沈黙が気まずくなって話題を考えていたが、ふと思い浮かんで口を開いた。



「ラウル」


「……え?あ、ど、どうかした?」


「いや……、どうして旅の話なんて聞きたいのかなって思って」



問い掛けられたことに関してラウルは小さく息を吐きながら、うーん、と考える仕草を見せて簡単に答えた。



「あ、ああ……。俺の仕事に関係してるかな、それは」


「ラウルの仕事?そう言えば何してるの?」



私がその答えを聞くと、確かにそこに疑問を持たなかったのはおかしかったと自分でも思った。



この時間帯は普通ならば誰もが仕事をしている時間帯だ。

もちろん、休みだったという可能性は捨てられないし、人には話し難い仕事をしているのかもしれない。



そう思いながらも私はきょとんと首を傾げる。

手と足は動かしつつ更に問い掛けると、ラウルは空を見上げながら答えるように言葉を続けた。

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