さよなら、大好きな人
「物書きだよ。いくつか本も出してる」


「へぇ……、私も読んだことあるかな」


ラウルが答えた職業に感心して驚いた声を出すと、ラウルは苦笑を浮かべて僅かに首を傾げた。



「どうだろう?そこまで売れている訳でもないし……まぁ、生活には困らない程度には売れてるからいいかなって思ってる」


「ふーん?楽しい?」



そんなものなのかな、と思いながらも私は何気なく問い掛けてみる。

ラウルは考えていたのか僅かに間を空けてから小さく笑みを零しつつ、こくりと肯定するように頷いた。



「新しいことを知って、それを自分の言葉で誰かに伝えられることは楽しいのかもしれないね」



――色々な場所に行って、自分の知らないことを知って。……そこで知った楽しいことは、全部教えてやるよ。



……っ!?


私はラウルから返って来た答えを聞いた瞬間に、他の誰かの声が重なったような気がして身体を震わせた。

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