さよなら、大好きな人
――いつかはさ、お前も色んな場所に行ってみるのもいいかもな。……え?一緒に?

――そうだなぁ……、それもいいな。二人で同じ景色見て、同じ感動を味わって。

――そんな風に新しい思い出を作っていってさ。これからもずっと一緒に居られたら、いいな。



頭の中で繰り返される言葉。

それは思い出してはいけない声で、私は手に持っていた道具を、かたんと地面に落としてしまった。


ぼんやりと空を見上げていたラウルが、その音に気付いたのか不意に私に視線を向ける。

すると、私が身体を震わせていることに気付き、不思議そうにしながら声を掛けてきた。



「ティナ……?」



――ティナ、好きだよ。

――ずっと一緒に居ような。



ラウルの声にも反応せずに、私は聞こえて来る声を遮ろうと耳を両手で塞ぎながらぎゅっと自分の身体を抱き締めてその場にしゃがみ込んだ。

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