さよなら、大好きな人
見えた顔に確認するように名前を呼べば、ラウルはほっとどこか安心した表情を浮かべて微笑みながら頷く。


そこでようやく泣いていたことに気付いて、慌てて涙を拭おうとするがその手をラウルは優しく止めた。





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「ラウル?」


「……。ティナが旅をしている理由は、誰かを、忘れたいから?」


「……っ」



手を止められて不思議そうに顔を見上げたティナに対し、俺は言うべきかどうか迷いながらも意を決して言葉を紡ぐ。

それが図星であるかのようにティナは言葉を詰まらせた。



「言いたくないなら聞かない。でも、誰かに話した方が、楽に、ならない?」



それで確信を得た俺はゆっくりと言葉を紡ぎながら、無理強いはしない方がいいな、と思いながらも僅かに首を傾げる。



――自分の中で抱え込んだままでは、きっと、いつか爆発してしまうだろうから。


話してくれても自分は何も出来ないかもしれないけど、それでもティナが話すことで楽になるのであれば話を聞いてあげたいと思う。

聞くだけならば、自分にも出来るから。


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