さよなら、大好きな人

私はどうするべきか迷いはしたが、ラウルの優しい言葉に甘えることにして、顔を僅かに俯かせながらぽつりぽつりと話し始めた。



「私が生まれ育った所は小さな村でね……、自然に囲まれた素敵な場所だって思ってる。何も無いって言われるかもしれないけど……。
その村にね、私の、大好きな人がいたの。その人も私を好きだって言ってくれて、それだけで幸せだった」



幸せだった、本当に。
世界の誰よりも幸せだったって思う。

大好きな人が、大好きって返してくれるだけで。変わらない日常ですら幸せだった。



「……その人は旅に良く出てて。帰ってくるたびに色々な話を聞かせてくれたの。それで帰ってきたら、ずっと一緒にいてくれた」



寂しかったけど、旅の話をするあの人を見ているのはとても好きで。

我儘は言わなかった。一緒に行きたいとも、早く帰ってきてね、とも。
ただ、傍に居られる時間だけは一緒に居て欲しかった。

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