さよなら、大好きな人
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ティナが泣きやむまでの間、俺はずっと抱き締めたままの状態でそっと寂しげに目を伏せた。
胸が痛い。痛くて、痛くて仕方がないのに胸が痛い理由が理解出来ずにいた。
今はティナの方が辛いだろうに。
それでも俺はティナに縋るかのように抱き締める力を強くした時だった。
躊躇いがちにそっと、抱き締めている俺の腕にティナの手が触れる。
「……あ」
「ラウル、ありがとう。……もう、大丈夫」
「……うん」
どこか気まずそうに声を漏らすものの、ティナは気にした様子はなく泣き過ぎて僅かに枯れた声で礼を述べている。
はっとして、慌ててティナを離した。
今更かもしれないが、出逢って間もない男に抱き締められるのは女の子としては嫌だったかもしれない。
謝るべきだろうか、と考えている俺をよそにティナはごしごしと涙の跡を拭き取った。
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