さよなら、大好きな人
――あの日以来かもしれない、こんなにも泣いたのは。
でも沢山泣いたおかげか、今まであったわだかまりが流れていったようなそんな感じもする。
確かに思い出せば胸は痛む。それでも、忘れる良いきっかけにはなるかもしれない。
腫れてしまっている目を一旦閉じて、心を落ち着かせるようにうん、と頷きながらラウルへと視線を向ける。
「ラウル?」
「あ……、えっと、ティナ?その、ごめん、ね?」
そこでようやく、ラウルの様子に気付いた私は訝しげに名前を呼んだ。
しどろもどろとどこか気まずそうに視線を彷徨わせながら、謝罪の言葉を口にするラウル。
だが、謝られる理由が見付からなかった私は不思議な表情で首を傾げた。
「……?何でラウルが謝るの?どっちかと言うと謝らなきゃいけないのは私なのに」
「いや……、だって。その、不可抗力だったとしても抱き締めちゃったのは事実だし」