さよなら、大好きな人
説明するのが若干照れ臭そうにぽつりと呟くように答えたラウルに、私は今更ながら気がついて目を見開いた。


そう言えば確かに抱き締められていた、後ろから。



自覚してしまうとぼっと顔を赤くなる。気にしなくていいと伝えたくて、ふるふると首を横に振った。


悪いのは自分だと思っているし、ラウルは自分を慰めるために抱き締めてくれたのであって下心があった訳ではないというのは重々承知している。



しばしの間少々気まずい空気が流れたが、ふとラウルは考える仕草を見せた後ゆっくりと私へと視線を向けた。



「ティナ。……良ければ俺の家に、来ない?」


「……え?」


「聞いて欲しい話が、あるんだ。……ティナには知って欲しい気がするから」


「う、うん?」



意を決したように提案したラウルの言葉を聞いて、私は予想外の言葉に驚いて目を瞬かせた。

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