さよなら、大好きな人
――聞いて欲しい話とは、何だろうか。
出逢ったばかりの自分が聞いても大丈夫な話だろうか。

そう思いながらもその出逢ったばかりのラウルに対して、抱えていたモノの全てを話してしまった自分に対して僅かに苦笑を零す。



本当は、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

誰かに聞いて欲しくて、でも忘れなければいけないから誰かに話すことが出来なかったけれど。


ラウルの優しい言葉に背を押されて考えることもせずに、堰が切れてしまったかのように話してしまった。



そう言えば、ラウルは自分の話を聞いた後、何も言ってはこないし聞いてもこなかった。

そっと様子を窺うように視線を向けてみても、今は背中しか見えないので何を考えているかは全くわからない。



もちろん、彼が自分のことを考えてくれて何も聞かずに居てくれているようなそんな感じもするが、それ以外の理由もあるような気がして。

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