さよなら、大好きな人
でもやっぱりそれを聞くのは憚られて、私は黙ってラウルの後を着いて行くことにした。



ラウルの家に行くまでの間、私達は特に会話をすることもなく、沈黙したままの状態で程なくしてラウルの家へと着いた。



「どうぞ、上がって?少し散らかってるかもしれないけど」


「あ、うん。気にしないよ」


「ありがとう」



鍵を開けたラウルが振り向き、扉を開けながら私へと声を掛ける。

はっとしたように頷くと、礼を述べたラウルに先に入るように手で促された。



促されるままに私はラウルの家へと足を踏み入れると最初に思った感想は、殺風景、という感じだろうか。

生活感は感じられるが、本当に必要なモノしか置いていない感じで。



散らかっていると言っていた通りに床にはいくつかの紙が散らばっており、物書きだと言っていたからその類かもしれない。

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