さよなら、大好きな人
触れない方がいいのかな、と思いつつもどこに行けばいいかわからず、結局は玄関先で立ち止まってしまった。

そんな私を見て、扉を閉めて中へと入って来たラウルはざっと見回す。



「んー……、あそこにあるソファーにでも座ってて?お茶でも用意するよ」


「う、うん」



困っていた私を見て、ラウルはソファーを指差しながら声を掛ける。私は、少々緊張気味に頷いた。



「……あれ、緊張してる?」


「あの人以外の男の人の部屋って入ったことないからちょっとだけ……」



それに気付いたラウルは苦笑を浮かべながら首を傾げて問い掛ける。私は素直に返事を返した。



「ああ、そっか。まぁ、緊張しないで。何かするつもりじゃないから」



確かに、と頷いた私に安心させるような言葉を掛けたラウルはキッチンへと向かった。



その様子を眺めていた私は、言われた通りにソファーまで向かい、ちょこんと座ると、ふぅ、と小さく息を吐いた。

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